雨の恩寵〜⭐︎
2026.07.02
雨が降る朝。
窓辺に座り、
湯気の立つ一杯のお茶を両手で包む。
庭木の葉から、
一粒、また一粒と、
雫が大地へ還ってゆく。
雨音は、
何かを語るでもなく、
何かを求めるでもなく、
ただ静かに、
「今」を奏で続けている。
その音に耳を澄ませていると、
心もまた、
一滴一滴ほどけてゆく。
嬉しいことがあったわけでもない。
願いが叶ったわけでもない。
それなのに、
胸の奥から、
ふわり、ふわりと
幸せが湧き上がってくる。
まるで、
誰にも知られていない泉が、
ようやく静かに
その水を湛え始めたかのように──。
幸せとは、
手に入れるものではなく、
何かになることでもなく、
ただ、
今ここに在ることを
思い出した時、
自然と溢れ出すものだった。
雨は空からの祝福。
雫は大地への感謝。
そして、
この胸いっぱいに広がる静かな歓びは、
命そのものが奏でる、
愛の調べ。
ありがとう。
今日という、
何気ない奇跡に。
ありがとう。
ただ、
ここに在ることへ。


