「天の航路がひらかれた朝」〜⭐︎
2026.05.04
夜の名残を抱いた空に
雨の記憶が静かに漂っていた
重くたゆたう雲たち——
それはただの水ではなく
時の層を運ぶ
記憶のヴェール
そのとき
見えない合図が降りる
風が目覚めるのではない
空そのものが
意志を持って動き出す
一斉に
一方向へ
揺らぎなく
迷いなく
巨大な流れとして
それはまるで——
天の航路
幾千の存在が
光の軌跡を描きながら
この空域を通過していくような
わたしはただ
その場に立ち尽くし
知ってしまう
この世界は
目に見えるものだけではないと
雲の奥で
何かが動いている
音もなく
形もなく
しかし確かに
そして
すべてが通り過ぎたあと
空はほどける
灰は光へと変わり
青が静かにひらかれていく
何事もなかったかのように
けれど——
あの朝
わたしは見た
天と地のあいだにひらかれた
一瞬のゲートを
世界の呼吸が
宇宙と重なった
その瞬間を


